「BROKEN FLOWERS/ブロークン・フラワーズ」


2週続けて映画を見てきました。
先週は「PRODUCERS/プロデューサーズ」を、
先日は、「BROKEN FLOWERS/ブロークン・フラワーズ」を。
前者が頭をからっぽにして楽しめる映画だとしたら、
後者は、色々と思い巡らしながら味わえるような映画でした。
ビル・マーレイがイイ!
私はすっごく面白かったけど、もしかしたら評価は分かれるところかも。



『BROKEN FLOWERS』
2005年/アメリカ/106分
◇監督:ジム・ジャームッシュ
◇出演:ビル・マーレイジェフリー・ライトシャロン・ストーン
    フランセス・コンロイジェシカ・ラングティルダ・スウィントン
    ジュリー・デルピークロエ・セヴィニー 
◇05年カンヌ国際映画祭審査員特別グランプリ受賞


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あらすじ

恋人に愛想を尽かされ去られてしまったドン・ジョンストンのもとに、一通のピンクの手紙が届いた。封筒の中にはピンクの便せん。そして赤い字で「あなたと別れて20年。息子は19歳。あなたの子です」と書かれていた!差出人の名はナシ。お節介な隣人ウィンストンの手はずで、かつてのモテ男、ドンはピンクの手紙の手がかりを求めて旅に出ることに。果たしてドンの息子は実在するのか。彼は当時付き合っていた恋人たちを訪ねていく。

goo映画より抜粋。
詳しくはコチラ→goo映画: Movie × Travel — 旅のような映画 映画のような旅


↓以下ネタばれありまくりの感想ですので、
まだ映画を見てない方はご注意をっ。




冒頭の恋人に去られる時でも特に引き止めることもなく、
暗い部屋の中で音楽を流したたずむ彼の様子には、
悲しいとかさびしいとかの感情があまり見られない。
「来るもの拒まず、去るもの追わず」
何もかもを淡々とあるがままに受け止めてる、って感じ。
っていうか無気力?とさえ思うほど。
こんな無気力で、ITで一財産を築いたってホント?
モテモテのドンファンみたいなオトコってホント?って思うほど。
「こんなオトコってやだな〜」ってのが一番初めに抱いた感想。
その淡々としたところやガツガツとしてないところが、
「クール」だと思ったり謎めいてるって思ったりして、
そこに惹きつけられたり、追っかけたりしたくなるのはよく分かる。
でもこの主人公みたいに、その度合いが高過ぎる人と一緒にいて、
そのつかみ所のないものをずっと追いかけていたら、
いつかきっと疲れてしまうはず。
情熱があって、なおかつ自分に若さがあるうちは追いかけるだけの
体力や気力もあるんだろうけど、
ふと我にかえった時、
手に入らないものを追い続けることの虚しさに襲われてしまいそう。
それゆえに、まだ愛情があっても別れを告げるのかな〜?なんて思ってみた。
(でもさ、こういうオトコって、別れるなんて面倒くさいことはせずに、
ダラダラと付き合いつづけそうじゃない?爆)


その同じ日、ドンの元に差出人のないピンクの封書が届く。
封を開けるとピンクの便せんに赤い字で
「あなたと別れて20年。息子は19歳。あなたの子です」と書かれていた。
ドンとは正反対のタイプの隣人ウィンストンはこの手紙に興味を持ち、
「息子は本当に実在するのか、手紙の差出人はいったい誰なのか?」
と執拗にドンに調べることを勧める。
ドンは拒否するも結局は受け入れてしまう。
ここでウケたのが、
その時に20年前の彼女の名前と住所をリストアップするよう言われ
嫌だと拒否していたドンなのに、
家に帰った後でちゃんとリストを作ってたところ。
↑やっぱり気になってるんじゃーん!とドンにツッコミたい!
それから、リストを律儀に作ってしまう可愛らしさにも!
自宅に戻り、携帯で嫌だと話しながらもそれを書いていると、
ウィンストンが訪れ、会話を続けながらフツーにリストをもらっていくところ。
冷やかしたり、「嫌だ」って言ってたくせに!とかのツッコミもナシ。
ちゃんとドンの性格を分かってあげてるんだなー、と。
・・・隣人のウィンストン、いいヤツじゃん!
ちょっとおせっかいなところはあるけど、嫌味がない。
受動的なドンと能動的な隣人ウィンストンは、いいコンビかも、と思った。


ウィンストンが航空券からホテルからレンタカーから地図に至るまで
全てをお膳立てし、ドンは差出人を捜し出すべく、
かつての恋人たちを訪ねる旅に出る。
途中、出会う女性全てに「オトコ」として反応するドン。
・・・さすがドンファンです(笑)


一人めには突然の訪問に驚きつつも歓迎されるのに、
訪問を進めるにつれ、次第に居心地が悪いものになっていき、
挙句の果てには殴られる始末。
最後に、既に亡くなっていた恋人のお墓を訪れたシーンの、
側の木にもたれて目を閉じたドンを見たとき、
彼のやるせない孤独を垣間見たような気がして、
少し泣きそうになった。


もし、昔の恋人が20年ぶりに自分の前に現れたらどうする?
・・・私はちょっと勘弁して欲しいな。
過去は過去、今は今で、お互いそれぞれ異なる人生があり、
過去の恋人と今の自分にもはや繋がりなんてないんだから。
それに加えて、男性はともかく女性としては、
時間につれ容姿が衰えていくことも気になるわけだし。
現在の自分に自信がなければ、キツイこと。
だから、ドンがかつての恋人たちに、
戸惑われたり拒絶されるのは当然だろーと思う。
過去を振り返るとき、
それがいい思い出なら、その思い出に浸ることはよくあることだけど、
自分にとって苦い思い出なら、やっぱりもう思い出したくない。
自分の意志でなく他人の手によって、
それも苦い思い出の張本人が目の前に現れて、
自分の記憶を掘り返されるのは、なおさら嫌だと感じるような気が。
過去と向き合うということは、
過去そのものと今現在をも合わせて向き合うことになる。
加えて「時間の経過」とも向き合うのは、正直しんどい。


ドンが旅を進めるにつれ、
自身も疲れたような描写があったり、
泊まったモーテルの一室で、窓を開け雨の降る外を
何をするでもなくぼんやりと眺めている後姿のシーンがあったけど、
それは、単に肉体的な疲れということではなく、
過去をめぐることへの無意味さや空しさなんかが、
少なからず表わされているような気がした。


結局、ドンは何の手がかりを見つけ出せないまま戻ってくることになる。
そして、帰りに空港で見かけたヒッチハイクをする青年と偶然再会し、
サンドイッチをおごることになる。
その青年に何か哲学的なアドバイスをと言われたドンは、
「過去はもう終わってしまった。未来はどうにでもなる。
 つまり、大事なのは今なんだ。」

と答える。

↑の言葉は、過去をめぐる旅を経たからこそ出た言葉だと思う。
過去は過去であり、もう終わってしまったこと。
取り戻せるものではないこと。
あまり色味を感じさせないこの映画の中で、
一際目立つ存在だった「ピンク」の存在と同じぐらい、
鮮やかで強く存在感を放つ言葉でした。


そして、父親の話題を避け急いでその場を去ろうとする青年に、
「自分を父親だと思っているんだろう?」と言い、
逃げる青年をなおも追いかけていく。
冒頭で、彼女に「家族は欲しくないの?」と聞かれたときには、
「欲しい」とも「欲しくない」とも答えられなかったドンなのに、
息子かもしれない若者をものすごい勢いで追いかけていく。
その執着っぷりと父性というドンの感情の露呈に、何だかホッとした。
最初の暗い部屋に座っていたドンと全然違う。
この旅がドンを変えたんだろうか?


結果としては、手紙を書いたのは誰なのか、ドンの息子が誰なのか、
そもそも息子がいたのかすら分からぬまま、映画は終わってしまいました。
ドンは受身的な人生から自発的な人生に変わるんだろうか?
うーん、変わらないような気がする。
でも、多分そんなことはどうでもいいような気がする。
・・・なんとなく、だけど。


この映画は、
意図的とは思うけど暗転が多すぎだし
(そのおかげで、私は色々と考えたりすることができたわけだけど)
伏線がかなりあったし(しかも全ての伏線が回収されてるわけではないし)、
淡々と話がすすむし、オチはないし・・・
ということで、合わない人にはきっと合わないと思う。
でも、私はとても好き。
今まで見た映画の中でも5本の指に入るほどです。
そして、ビル・マーレイの抑えた目だけの演技、あの絶妙な間、佇まい、
とても良かった!
・・・ああいうちょっと情けないタイプ、好きかも。
そして、エチオピア・ジャズ。
なんだか演歌みたいだなーって思ったけど、なんかクセになる。
サントラを買ってしまいそう。汗




そうそう・・・。
映画を見に行った夕方、関東地方では物凄い大雨でした。
家に帰ってから気付きましたが、アノ人のせいですよ、きっと!
そう!その日は、福耳のPV撮影日でした。
(↑コレ応募するの忘れてた。気がつけば締切日を過ぎてた〜汗)
シカオちゃん・・・まだ「雨男」パワー衰えず!笑