6/4 テレビ東京「〜空色グラフィティ〜君に会いたくて」


見終わった後の、どんよりとした気分からようやく立ち直って、
考えがまとまってきたので書いてみます。


番組としては、淡々とゆる〜い感じで話が進みます。
多分、雨音の録音の話がなければ、
ここまで印象に残らなかったかもしれません。。。


スガシカオ」から「菅止戈男」へと段々変わっていく姿が印象的でした。
サブタイトルは「深夜放送」20分ほどの放送。
タイトルにもある「君」は、
部屋の中で雨音を録音していたあの頃の自分。
オープニングはオシャレ系の映像で(←ちょっとカッコよかった)
ピアノが流れる中、自己紹介。名前・年齢・出身地を述べる。
その後、室内でインタビュー。
子供の頃の思い出は?の質問に、とにかくずっとひとりだった、と言う。
例えばどんなことをしていましたか?の質問に、
小学校の時にラジカセをもらったけど、音楽も聴かずに雨の音をとってた、と言う。
マイラジ最終回のスタジオの様子。
「ひとりでこっそり深夜放送を聴いていたあの頃の自分に
君はラジオを通じて語りかけていたんだ。
今日で終了してしまうから、あの頃の自分に会いに行こう」とナレーションが入る。
番組終了後、六本木周辺を歩く。
その後、生まれ育った街(代々木あたりかな?)に赴く。
幼稚園〜保育所〜小学校〜当時住んでいたマンションへ向かう。
小学校の時の自分は、オープンマインドでいるから
楽しい記憶はあるものの自分と結びつかない、と言う。
夜が明けていく中、よく行った新宿副都心へ最後に向かう。
あの頃の自分というものは正確にはわからないけど、
自分にとっては、ひとりでいた時間が鮮烈に覚えてるしあの頃だった、と。


ここからは120%個人的な感想です。


思い出というと…
楽しかったことは、その事実だけがデフォルメされて覚えていて、
詳しい状況とかはあまり覚えていないのです。
逆に辛かったことや悲しかったことは、
その時に目にした風景やニオイとかが切り取られたような形で、
その時の気持ちの象徴として、
私の記憶の中に留まっています。


雨音を録音していたという話が出て、
「Thank You」をバックに六本木を歩く映像が流れた時、
涙がボロボロとこぼれ落ちていました。
その涙に気がついた時、自分でもビックリしました。
そして、ずっと私の心の底にあった記憶、
…雨を見ていたことを思い出しました。
今思うと、「ひとりでいる」時間の象徴的な記憶でした。

「ひとりの世界になった時に、
 淋しくなったりとか辛くなったりしないように、
 世界にガーンと入るんですよね」
シカオちゃんは言っていましたが、
シカオちゃんにとって雨音の録音がその世界への入口だったように、
私にとっては、空を見上げて雨音を聴くことがそうでした。
「自分が一人でいる」ことに気づいてしまわない為に。
気がついてしまうと、淋しくなってしまうから・・・
でも、「ひとりでいること」そのものが辛いわけではなくて、
「ひとりでいる」ことを客観視するから辛くなってしまうのです。
「ひとりでいること」はそこに当たり前のように選択肢としてあって、
当然のようにそれを選んでいました。
そして、今も当たり前のようにそこにあります。


私は、幼稚園からずっと私立だったうえに、小学校の時に引っ越したので、
幼馴染は身近にはいませんでした。
また、一人っ子で両親は共働きで、いわゆるカギっ子でした。
だけど、当たり前のように状況を受け入れていたので、
親を恨むとかのネガティブな気持ちは全くなくて、
ひとりでいることに何の疑問も持っていませんでした。
だから、小学校の時の放課後は「ひとり遊び」が基本。
読書・ファミコン・散歩・ローラスケート・物語作り…などなど、
とにかく一人でできることをして、やり過ごしていました。
ところが、雨が降ると、外に出れなくなるので、遊びの数は減ります。
そんな日に、ひとり遊びに飽きてしまうと、
私はマンションの窓から、上を見ていました。
雲が形を変えながら流れていくところ、
空の色の移り変わりの様子、
そして、雨の音や雨が降る前後のニオイ。
「サーッ」「ザー」「ジャー」とかの雨が降る音、そして風の音。
・・・いろんな音があるんです。
雨が降り出してくると、
みんな家の中に入ってしまうから、人の気配が減ってしまうし、
それまではっきりと聞こえていた周りの音が、
雨音ににじんでしまってだんだんぼんやりとしてきます。
そうなると、世界が自分から段々遠ざかっていって、
この世界には自分だけしかいないような錯覚さえ感じる程でした。
そんな錯覚に惑わされてしまわない為に、
見つけた手近な方法が、
ひたすら雨を眺め、音に耳を傾けることだったのかもしれません。


雨音を録音していた話と「Thank You」が流れて歌詞が耳に届いた時、
悲しいと思うより先に涙が出たのはきっと、
小さい頃の私が、気づかないようにしていた寂しい気持ちや、
言いたくても言えなかった、誰かに「そばにいて欲しいの」っていう言葉や、
ひたすら外を眺めていた幼い自分の姿が、
一瞬で心の底からあふれ出してきてしまったから、なのでしょう。
シカオちゃんにこれだけ惹かれてしまうのは、
根底にある寂しさや悲しさ、誰かを強く求める気持ちに、
無意識に自分の姿を重ねていたこともあるのかなあ。。。


番組的にはゆるすぎてイマイチだったけど、
個人的には見てよかった、という感想。
シカオちゃんのこともっと好きになってしまった。
そして…、シカオちゃんの寂しさや私の寂しさは
大人になって埋められたのでしょうか?
・・・やっぱり、埋められるものではないかなあ。
幸せになって欲しいな、と思いました。
もちろん、私も。