中田英寿というひと


昨日のブラジル戦は残念ながら完敗でしたね。
仕方ない結果なのかもしれません。
選手のみなさん、ジーコ監督、携わった方々、本当にお疲れさまでした。
でも、W杯はまだまだ続きます。


で、中田英寿というひとです。
まぁぶっちゃけ、あまり好きな選手ではありませんでした。
昨日の試合を終えるまではね。
もちろんサッカーの能力・実績ともに素晴らしい選手だし、
サッカーに対する情熱やひたむきさもすごくよく分かる。
勝利への執念も彼より強い人は、日本代表の中でも多分いないでしょう。
でも、集団スポーツであるサッカーとして、
中田自身の行動やチーム内での立ち位置が、
私にとってはあまり好ましいものではありませんでした。
チーム内で他者と距離をおくようなところ、
あまり感情を表さない態度、
勝つという目的ゆえの冷静すぎる(と思えるほどの)発言の数々、
明らかにチームから「浮いてる」。
思うに、集団というものが苦手な私にとって、
彼が漂わせている雰囲気に、自分もこうなのか?と息苦しくなってしまう、
ということが大きかったのかも。
(もちろん私は中田みたいな凄い人ではありません。念の為)
そして、何よりも他のメンバーと違うと感じさせるのは、
「勝つことに対するモチベーションの違い」
最後まで、中田と他の選手とは違うものを見ていたように思います。
チームとして戦う以上、
中田は自身の考えを他の選手に伝えるべく下におりてくるべきだった。
実際下りてきたときにはタイミングとして遅すぎたような。
そしてチームメイトは、中心として中田がいる以上、
それを理解すべく受け入れようとするべきだったと思う。
もちろん、そういった努力は互いにしてきたと思いますが、
それでも素人目にもチーム内でのちぐはぐな印象は否めない。
1対1でもコミュニケーションって難しいと思うけど、
集団の中でコミュニケーションを図るのは本当に難しいね。


私は残念ながらリアルタイムで試合を見れなかったので、
午後、駅の売店で新聞の見出しで、
「中田が試合後ピッチで涙を見せた」ということを見かけた時は、
「そんなことあるはずないやん」と思いました。
夜のニュースを見て、それが事実だったことを知りました。


ピッチに横たわってしまい動かない中田。
遠くから映し出していても涙を浮かべてると察することができる。
そんな中田に、選手の中で声をかけたのは、
対戦相手でイタリア時代の同僚のアドリアーノと、 そして、宮本だけ。
ドーハの時はカズやラモスや中山、みんなが仲間として悔しさを共有していた。
でも昨日の中田が感じた感情は誰とも共有しなかった。
そして、試合後の会見ではいつものような淡々とした受け答えでした。
最後の最後まで、ストイックさを通し、自分に課した重みを背負い通してた。
もし、今までの感情を洗いざらいぶちまけるような会見でも
それはそれでアリだったかもと思うけど、
彼はそれを選択しなかった。
自分への共感や同情を得ようとしませんでした。
それを見て、今までの中田に対する印象が変わった。
今まで、自分の好むと好まざるに関わらず、
苦言を呈するような憎まれ役も引き受けてたと思う。
「チーム」のために、そして、「勝つ」という最大の目標のために。
マスコミにどう報道されようとも、周りにどう受け止められようとも、
最後まで、自分のスタイルを通し
その役に徹しきった中田英寿というひとを、
本当に凄いひとだと、私は思った。


あのピッチに横たわった時、中田の胸に去来した思いは何だったんだろう?
サッカーとの訣別の涙じゃないことを願ってます。